神社の拝殿・正面向かって右、樹齢はあまり定かでない、なんとも愛嬌ある老木のムク(椋)の木が立っている。
何時の時代に遭遇したものか、この木の背面は大きく焼き焦げ、のこぎりで削られた痕も残る。根本辺りはもはや向こうが透けて見えるほどの空洞になっている。にもかかわらず皮一枚でスックと立ち聳え、毎年春を忘れず境内一杯に葉を青々と広げてくれる。神社のむささびもとりわけこの木が好きなようである。
参詣者達はこの傷つきながらも立ち続ける老木から、なんらかの感銘を得るのか、最近とみに人気を集めだした。誰が言ったのか、暮れあたりから注連縄(しめなわ)も張られている。
ところで最近、奈良県十津川村の神職・玉置健一氏から二幅の大額が奉納された。はじめて当社に訪れた時から氏はこの木に魅せられたという。墨で描かれたこの椋の木には龍神姫や七福神といった多くの神々が宿っている。
どうか改めてもう一度水屋神社の椋の木を眺めていただきたい。
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